本のこと

October 11, 2012

肉体を鍛えること

今週、密かに期待していたことがありましたが残念でした。

村上春樹氏ノーベル賞ならず。

9784163731001今週はなんとなく気になって
夜寝る前にパラパラと
持っている本をめくったりしていました。

タイトルもカッチョイイ
「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」
というインタビュー集があります。

村上春樹氏はみなさんご存じのように
マラソンランナーでもあります。

彼にとって走ることはとても大切なことです。



そして走ること、肉体を鍛えることについて、
こんな話が載っています。
以下、引用します。

==========

『作家が物語を立ち上げるときには、
自分の内部にある毒と向き合わなくてはなりません。
そうした毒をもっていなければ、
できあがる物語は退屈で凡庸なものになるでしょう。
ちょうど河豚のようなものです。
河豚の身はとてもおいしいのですが、
卵巣、肝臓などの部位には致死量の毒を含んでいることもあります。
僕の物語は、僕の意識の暗くて危険な場所にあり、
心の奥に毒があるのを感じますが、
僕はかなりの量の毒を処理することができます。
それは僕に強い肉体があるからです。
若いときには、誰もが強い。
だからトレーニングを積まなくても、
たいていは毒に打ち勝つことができます。
でも四十歳をすぎてくると、その強さは自然に衰えてきます。
もし不健康な生活を送っていれば、
毒をもう処理することができなくかるかもしれません。』

またこんな話も。

『物語を得るためには、
僕はその源を探して掘り進めなくてはなりません。
僕の心の暗い場所に物語が潜んでいて、
そのすごく深いところまで掘って行かなくてはならないのです。
そのためにも、肉体的に強くあることが必要になります。
少なくとも強くないよりは、強くあった方が作業が円滑になります。
走り始めてからは、それ以前よりも長く集中できるようになりました。
暗いところまで行き着くためには、何時間も集中しなくてはなりません。
その途中で僕はさまざまなものごとに遭遇します。
もし肉体的に弱ければ、そうしたものを時として得そびれてしまうでしょう。』

==========




小説家という職業に限らず、

どんな人も自分の内部に毒を抱えているんだと思います。

そこにちゃんと向き合おうとしたとき、

毒を処理する強い肉体が必要になる。


自分の源を探して掘り進めなくてはならないときも。



ヨガで肉体を鍛えることもできるし、

それはきっと役に立つ。



岩手 盛岡 yoga studio シャンティシャンティ

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September 04, 2012

それをするのに決して急いではいけません


質問者
もし、私が他の人以上に私の心を使わねばならないとしたら、どのようにして私の心を静かにしておくことができるのでしょうか。私は師のように独居し、仕事を放棄したいのです。


マハルシ
そうではありません。あなたは自分のいるところにとどまって、仕事を続けていくことができます。心に生命を与え、すべてのこの仕事をすることができるようにする底流となっているのは何でしょうか。もちろん、真我です!だから、それはあなたの活動の本当の源泉です。あなたが活動をしているあいだ、ただそれに気づくようになりなさい、そしてそれを忘れないようにしなさい。あなたが仕事をしているあいだにも、あなたの心の背景にあるそれ(真我)を熟考しなさい。それをするのに決して急いではいけません!仕事をしているあいだにも、ゆっくりとして、今いるあなたの本当の性質の記憶を保ちつづけ、あなたにそれを忘れさせる原因となる焦りを避けるようにしなさい。思慮深くありなさい。心を静かにする瞑想を絶えず実行し、それを支えている真我と心との本当の関係に気づくようにさせなさい。仕事をしているのはあなたであると思わないようにしなさい。仕事をしているのは底にある流れであるということを考えなさい。あなた自身をこの流れと同一視しなさい。もしあなたが急がされることなく、記憶を保ったままで仕事をするならば、あなたの仕事あるいは奉仕は障害物であるとは限らないのです。


『不滅の意識 ラマナ・マハルシとの会話』より
記録:ポール・ブラントン ムナガラ・ヴェンカタラミア
翻訳:柳田侃
ナチュラルスピリット刊


P.48の仕事についての会話の部分。

なんというか、具体的じゃないのがありがたいというか、
わからないながらも
言葉だけを表面的に受け取るのではなく、
この部分を丸ごと受け取って、
自分で体験していきたいなと・・・。

なので丸ごと引用です。





岩手 盛岡 yoga studio シャンティシャンティ

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August 28, 2012

『呼吸の本』 『呼吸の本2』


昨日プラっと本屋さんへ行ったら

『呼吸の本2』 加藤俊朗 著 が出ていました。
(6月に出版されていたんですね・・・)

『呼吸の本』は、谷川俊太郎さんと加藤俊朗さんの共著。

以前本屋さんで、「呼吸」という字と「谷川俊太郎」という字が
一緒に目に入ってピピピときたので、手に取った本。

どちらもすごい本です。

一度読み出すとやめられない。

深い話ばかりなのにスルスル読んでしまう。

それはきっと、
著者が谷川俊太郎さんに文章の手ほどきを受け、

わかりやすく書く、

素直に書くことを信条にしているからなのでしょうが、

それ以上の純粋さが著者の中にあり、
言葉がキラキラしています・・・。

昨日、『呼吸の本2』を読んで改めてこの2冊のすごさに気づきました。

何度でも読み続けたい本です。

加藤俊朗さんのHPにも載っている谷川俊太郎さんの詩です。


「息」

風が息をしている
耳たぶのそばで
子どもらの声をのせ
みずうみを波立たせ
風は息をしている

虫が息をしている
草にすがって
透き通る胎を見せ
青空を眼にうつし
虫は息をしている

星が息をしている
どこか遠くで
限りなく渦巻いて
声もなくまたたいて
星は息をしている

人が息をしている
ひとりぼっちで
苦しみを吐き出して
哀しみを吸い込んで
人は息をしている

谷川俊太郎
詩『手紙』
1984年より




岩手 盛岡 yoga studio シャンティシャンティ

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August 21, 2012

自律神経スイッチタイム

今月はいろいろなものを整理しています。
衣類からおそるおそる紙媒体に進んでいます。
(本や資料のことです)

本を整理しているとまた読んでしまい、
時間がいくらあっても足りません。。。
そして・・・
本棚の奥にこんな素敵な本を見つけてしまいました。


『全身「からだ革命」』
草刈民代

この本、全編面白いのですが、
この暑さで疲れがとれない方に
朗報が載っていましたっ!

シェアしますね。




木津龍馬さんというメンタル&フィジカルトレーナーの方が
本の中でも草刈民代さんにさまざまなアドバイスをしているのですが、
その方のコラムからです。


人には午後5時〜12時の間に
体温が0.5度ほど上がる時間帯があり、
その時間帯が自律神経の切り替わる時間だそうです。

交感神経より副交感神経が優勢になる時間帯を知り、
ちょっとした運動や呼吸法をとりいれることで
(・・・ヨガですね♪)
基礎代謝を効率的に上げることができ、
その結果、
痩せやすい体質と生理などの周期を安定させることができるそう!

自分の基礎体温を把握するには
連続して3日間ほど毎日夕方5時以降、
1時間おきに体温を計り、
体温が上昇する時間帯を割り出します。

割り出した時間帯に行う、
一日5分の呼吸法は実に効果的。

8秒かけて鼻からゆっくり吸って

8秒止めて

8秒かけて吐き出す。

腹式呼吸を意識して一日5分行うだけで
体質改善のセルフスイッチが入ります。

当然、自律神経を整える働きもあるので深い眠りも得られます。

上記の呼吸法の後にストレッチなどをすると
(・・・ヨガですねっ!)さらに効果的。

基本は就寝の1時間前。
毎日やるよりは週に2回休みましょう、

と書かれています。


知りたいですねーーっ、自分のスイッチタイム!

面白そうです。

17時〜24時までの1時間ごと10回の検温に
少々やる気が必要ですが・・・。

今度お休みの時に計ってみたいと思います。

ご興味のある方、ぜひ一緒にトライしましょう〜♪



岩手 盛岡 yogastudio シャンティシャンティ

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August 07, 2012

蛍の光や雪あかり

何の下調べもせずに行った高野山。

解説本ではなく、
空海本人の著作も読んでみたいと思いながら、
この手の本、買っても最後まで読まないことが多く、
自分に不安を抱きつつも

三教指帰」(さんごうしいき)を手にとりました。
(まさか原文とはいかず、口語訳ですが・・・)


序文ですでに驚いています・・・。

序文に、空海本人が自分の紹介として
大学で勉強したときのことを、こんな風に書き記しています。

「雪蛍(せつけい)を猶(な)お怠るに拉(とりひし)ぎ、

縄錐(じょうすい)の勤めざるに怒る。」

口語訳は

昔から貧しくて灯油が買えないために
蛍の光や窓の雪あかりで学んだという故事や、
読書中の眠気を払うために首に縄をかけたり、
股を錐でつついたりしたという故事がありますが、
それさえまだ不十分だと思うくらいの気持ちで
熱心に勉強しました。

「三教指帰」角川ソフィア文庫
加藤純隆、加藤清一訳。

「三教指帰」が書かれたのが798年。

その昔、蛍の光や雪あかりを頼りに勉強していたという話は
聞いたことがありますが、

それが、空海が昔というくらいの話だったということにも
驚かされますが、

それすら甘っちょろいっ!

とばかりに、勉強していた空海のすごさ・・・。

話の内容にまだ入っていない序文の段階ですでに脱帽っ!



岩手 盛岡 yogastudio シャンティシャンティ

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March 18, 2012

終らない物語はないから

昨日、21年間続いたNHKの「週刊ブックレビュー」が終了しました。

私が唯一、毎週録画していたテレビ番組。
終るには惜しい、とても好きな良質の番組でした。寂しいです。

昨日の最終回は21年間の振り返りでした。

3人のゲストがそれぞれ三冊のオススメの本を持ち寄って、
その内一冊をみんなで書評する番組。

司会者二人の方は三冊読まないといけない。

司会者の方々ももちろん本好きで、
児玉清さんをはじめ、素敵な人ばかり。
梯久美子さんと中江有里さんも好きでした。

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梯久美子さん。
ノンフィクション作家。
上品な話し方の、
とても素敵な佇まいの方。




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中江有里さん。
今回のことも書かれているブログ。
     ↓ ↓
Diary From Yuri



中江有里さんは2004年から5年間、
毎週っ!司会を務めていたそうで、
となると、毎週三冊読み続けていたことになる。

ご自身も30代をこの番組に費やしたと言っていました。

でも充実した期間だったのでしょう。
どんどん素敵になっていったから。

「自分にとって、この番組は一冊の本そのものだった。

今まで読んだ中で一番長い物語。

こうして今、読み終わるのが惜しいのは

その本が本当に面白くて、楽しかったから。

でも

終らない物語はないから


また新しい本に巡り会いたい。」

とおっしゃっていたことが心に響きました。

ご自身のブログにも、番組が終ってしまう寂しさと
自分の立ち位置を見据えて、
毅然と、
番組の終わりを受け入れようとする思いが綴られていました。



いつの間にか消えるようにして、
終ってしばらく経ってから気づく物語。

急に、いきなり、暴力的に幕を引かれる物語。

そして自分の意思を持って終らせる物語。

私たちは様々な物語をひとつひとつ終らせて
自分自身の全集を編んでいるんですね。


今日の番組の中で児玉清さんが
シドニーシェルダンにインタビューしていました。

「あなたはページターナー(読み出したら止まらない作家)と
呼ばれていますが・・・」

「最近、面白い本が少ない。読んでいても眠くなってしまう。

あと4,5章あり、最後まで読み終わろうと思っても
その章を読むと寝てしまう・・・。

私はそこで、もっとページをめくらせてしまう本を書きたい。

意識的に、ページターナーになろうとしているんです」



自分の人生の物語、

自分が自分のページターナーになりましょう〜っ!


素敵な番組をありがとうございました。








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March 14, 2012

The Yoga Resource Book

今月末からノア・マゼのアヌサラ100時間イマージョントレーニング。
今回も北千住のスパンダヨガスタジオにお世話になります。

そこで買った・・・というか、オーナー久美子さんが
欲しい人の分をまとめて注文してくださった

Darren Rhodes(ダレン・ロード)の
The Yoga Resource Book
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三夏先生が、ご自分の練習の時に
今日のメインポーズを開いて立てていると聞きました。

最近その真似をして、クラスの時に使っています。

何しろ1ページ1枚、400ポーズあるので分厚いですっ!
立てておくにはピッタリ。

クラスの正面に今週のメインポーズのページを開いておき、
「今日のテーマのポーズはこちらですっ」

と紹介すると、

「ヒェ〜〜っ!?」

というようなリアクションを
皆さんから毎回いただけて嬉しい限りですっ!

驚きは感動のようなものですからね♪






今日は水沢でRira Yogaを主催している顕輝依さんも
遊びに来てくれて嬉しかったです。

ちょっと緊張してしまい、
かなり噛んでいましたが・・・。

顕輝依さんから
夏に素敵なワークショップを
開催する計画があることもお聞きしました。

フフフ・・・
めちゃんこ楽しみです。

詳細が出たら皆さんにもお伝えしますので
ご期待ください〜。

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October 14, 2011

「紅梅」

美しい小説を読みました。

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癌であった作家吉村昭さんの晩年の闘病の日々を、妻であり同じ作家である津村節子さんが綴った私小説。
震災後、吉村昭さんが岩手にとても縁の深かった人だったことを知り、
『三陸海岸大津波』を読み、文芸春秋の特集で彼が癌で死んだことを知り、
身内に末期癌患者がいることもある経緯で手に取ってみた。




淡々と静かに書かれていてスルスル読めていく。
純文学というものをほとんど読まないがやはり、文章がうまいのだと思う。

あまりに淡々と話が進むので、
そしてその日常の何気ない二人のやりとりの描写に引きつけられて、

吉村昭さんがどうやって死んでいったのか知っていたのに、
そのことをすっかり忘れて小説と同じ時系列の中にいた。

そしたら急に、最後の数ページで
ミステリー小説のどんでん返しのような衝撃で彼の死の場面がやってくる。

夜中に読んでいて、声を上げそうになった。


この人は闘病の間、どうやって生きようかと思っていたのではなく、

どうやって死のうかを考えていたんだと・・・。


新作の短編を最後まで推敲している姿や
コーヒーとビールが飲みたいと一口含んで
「おいしい」と言った外の姿だけを読み進んでいたら
その日の夜、吉村昭は突然自死を選ぶ。

その意志的な死を現実に行動することによって、
オセロが全部ひっくり返ったように、
それまで見えなかった彼の思考世界が現れてくる。

そして、お互いを気遣う距離感がとても良い感じで
好感を持って読み進めてきた夫婦愛の中に、

どうしても相容れない個としての孤独というものを突きつけられた。



表紙は円山応挙の「老梅図」とある。

美しい装幀だなと思う。装幀は関口聖司さんという方。

ちょっと寂しい。

紅梅は吉村昭が好きだった木だそうだ。

凛とした孤独がある。


それにしても、最愛の人の自死を受け入れて
生き続けていく津村節子さんの孤独も
どれほどのことだろうかと思う・・・。

でも、淡々とした静かな筆致に、
彼女の個人の孤独も美しく、凛と、光り輝いている。

津村節子が、吉村昭の死の最後に
無我夢中で叫びかけた言葉がある。
本人はまったく記憶になくて、
あとでそばにいた娘から聞いたらしい。

小説の中で彼女は
「あなたを愛しているわ」でも、
「私もすぐ行くから、待っていて」
でもない、そんな言葉を夫は喜んで聞いただろうか、
と自責の念にかられている。

私はその一言を、素晴らしいと思う。

それは感情を超えた、

夫婦それぞれが持つ孤独を超えた、

作家同士が夫婦となった、魂と魂のつながりから出た一言だと思うから。

(これから読む方のためにあえて明記は控えます。)

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September 26, 2011

小さな奇跡

前回の遠野行きのおまけ。

最後の夜、
「ますみさん、これ、」
と、けいこさんからサプライズがありました。
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なんとっ!!!!!

どーしてこの本欲しかったの知ってるんですかっ!!!

まさか、遠野の曲がり家でこの本と出会えるなんて!!



・・・かなりビックリしました。

2009年の秋、今はなき赤坂のスタジオ・ヨギーで
ダレン・ロード氏のTTがありました。
その時のメンバーとお茶していた時、
福岡でアヌサラヨガを頑張っているAさんが、
この本が一番好き、
と、熱心にこの本のことを話していたのでした。

私もぜひ読みたいと思ったのですが、
アマゾンなどにもなく、そのうち諦め、
そのうちすっかり忘れきっていました。


本当に・・・


忘れることは、思い出す喜びのためにあるようです。

でもその時けいこさんはいなかったし、
この本の話をけいこさんとしたことはなかったはず・・・。

けいこさんがそれをプレゼントしてくれたこと、

その本を欲しいと思っていた時には、
二人で訪れることになるなんて思いもよらなかった
遠野の土地で受け取っていること、

私にとって、それは小さな奇跡です。



パラパラめくりました。


2年前、話を聞いて読みたいなぁと思った気持ちとは、
違う気持ちで、今、この本の内容を
切実に知りたいと思っている自分がいます。

2年前ではなく、

きっと今、私が巡り会うべき本なんだと思います。


持ってるかもしれないと思ったけど・・・と、けいこさん。

それでも私にプレゼントしようと思ってくれたことが

なにより嬉しいです。

大切に読みますね。

ありがとうございます。



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June 05, 2011

「ホームレス歌人のいた冬」

うちは父が新聞を3紙、岩手日報、朝日、日経を取っているのですが、
私はいつも読むというよりは見るだけ。
それでも日曜は三紙とも新刊の書評が載っていて
そこだけは読むのを楽しみにしています。

ですが今日は、日経歌壇、
読者から送られてくる短歌、俳句のコーナーに初めて目を止めました。
全国紙に盛岡の方が入選されていました。

『恋すると惚れるの違ひを知りしとき桜が暗く輝きてゐき』
(盛岡 藤原建一)

種村弘さんの選評には
「暗く」がいい。「惚れる」ことの不条理感と響きあっているようだ。
と書かれています。

私もこの句、とってもいいなと思いました。
「暗く」の暗さが、本当にいろんな色を全部混ぜた、
混沌とした黒の暗さのように感じ、
妖しく光を放つ暗さにも感じて・・・。
大人の句ですね。

こんな句を作られている方が近所に住んでいるなんて
考えるとちょっと楽しい。

どうして歌壇コーナーに目を留めたかというと、
今、ちょうど
「ホームレス歌人のいた冬」 三山喬著
を読んでいたから。

投稿した入選作には名前と住居地が載るそうですが、
公田 耕一 ホームレス
として、2008年暮れから2009年春にかけて
朝日新聞の歌壇で注目を浴びた、
消息のわからないホームレス歌人を追ったノンフィクション。

まだ途中ですが、面白いです。

見えない人の行方を捜す事は、
捜している人自身の内面を捜すことでもあると思う。

その昔、行方不明になった人を待ち続けたことがあります。

あの時のわけのわからない宙ぶらりんさは、
なんとも心の持って行きようがなくつらいものです。

読んでいると、今の日本のいろんな状況とも重なります。



moriokayoga at 23:02|PermalinkComments(0)TrackBack(0)